備前焼とは?
岡山県備前市周辺を産地とする炻器です。伊部地区で盛んなことから、伊部焼(いんべやき)とも呼ばれます。絵付けせずそのまま焼いて、土の表情を生かしているのが特徴で、炎の力で胡麻・棧切り・緋襷・牡丹餅などの変化が楽しめます。
1つとして同じものがなく、使い込むほどに味が出ると言われ人気です。現在では、微細な気孔の表面のおかげできめ細かい泡が長く続くとして、ビアグラスや、花が長持ちする花瓶も人気があります。
備前焼の陶器市
備前焼まつりは、毎年10月第3土日に、備前焼伝統産業会館とJR赤穂線伊部駅周辺にて開催されます。
昭和58年から始まったお祭りで、現在では2日間で14万人以上が訪れています。
金曜の夜には前夜祭も行われ、備前焼の即売所・ろくろや窯詰めなどの体験コーナー・ミスコンテストなども開催されます。
日常使いできるお手頃な作品の他に、全国各地で活躍されている有名作家さんの作品も並びます。通常の2割引きで購入できる品や、1~5万円の「人間国宝・文化財作家」の作品も入っているという福袋も用意されています。
備前焼の歴史とは?
備前焼の歴史は、古墳時代の須恵器(すえき)が発展したものと言われ、平安時代に熊山のふもとで生活用器の碗・皿・盤や瓦など南大窯跡が生産されたことが始まりとされています。
鎌倉時代後期には備前焼特有の赤褐色の焼肌のものが焼かれ始め、主に壷・甕・擂鉢が作られました。落としても壊れにくいこの時代の作品は、「古備前」と呼ばれて珍重されます。
室町時代末期には、茶道の発展とともに茶陶として人気が高まります。「田土(ひよせ)」と呼ばれる伊部で採取される粘土が使われ、また、ろくろの使用により量産できるようになりました。
江戸時代に入り、小さな窯が統合されて大窯が築かれますが、京都・有田・瀬戸などで磁器の生産が盛んになったことと、茶道の衰退とともに衰えていきます。
明治・大正時代にも低迷期は続きましたが、窯の火を絶やさず、水瓶や擂鉢・酒徳利など実用品の生産を続け、昭和に入って金重陶陽が桃山陶への回帰をはかり、芸術性を高め、国の重要無形文化財保持者に指定されたことから再び人気が戻りました。
注目の作家さん
金重陶陽
1896年 岡山県備前市生まれ。本名金重勇。
1910年 父について作陶を始める。
1925年 備前三名工として知られるようになる。
1942年 備前焼技術保存者に認定。
1952年 備前焼無形文化財記録保持者に認定。
1956年 備前焼重要無形文化財保持者に認定。
1967年 逝去(享年71歳)
桃山時代に回帰する作品作りによって備前焼の人気を復興させ「備前焼中興の祖」と呼ばれています。
また、多くの弟子を育て、人間国宝を複数輩出しており、備前焼の歴史にとって欠かせない人物です。
森本仁
1976年 岡山県備前市生まれ。
1999年 東京造形大学彫刻科卒業。美濃・豊場惺也先生に師事。
2003年 備前に帰郷し製作を開始。
往来の備前焼のイメージにとらわれず、素材をどう生かすか、日常的に使ってもらえる焼き締めの器の提案、「自然と使う人の生活に溶け込んでいってほしい」という思いの詰まった作品を作られています。
備前焼の特徴
「酸化焔焼成」によって堅く締められた備前焼独特の赤みの強い味わい
田んぼの底から掘り起こした「田土(ひよせ)」と呼ばれる希少な粘土層の土と、山土、黒土を混ぜ合わせた鉄分を多く含む土を焼しめることによって、独特の赤褐色の地肌が現れます。
窯変によって生み出される模様
1つとして同じものはなく、胡麻・桟切り・緋襷など、薪の灰が融けたり、藁を巻くことなどで模様をつけます。
投げても割れぬ、備前すり鉢
釉薬をかけずに2週間前後1200度以上の高温で焼き占めるため、強度が高く割れにくいため、こう言われていました。
長い歴史の中で実用性と芸術性を磨いてきた備前焼の伝統によって独特の世界観を築き上げています。
焼き物の産地としての備前の特徴
伊部駅周辺には窯元やギャラリーが多くあり、また、レンガ作りの赤い煙突や備前焼の屋根瓦を用いた建物の古い町並みが楽しめます。備前焼伝統産業会館や、備前陶芸美術館にも多くの人が訪れています。
いたるところに備前焼が並んでいる天津神社、「近世日本の教育遺産群ー学ぶ心・礼節の本源ー」として日本遺産に認定された、日本初の庶民のために開かれた学校、特別史跡旧関谷学校など、歴史と文化に触れることのできます。
出典:https://www.okayama-kanko.jp/modules/kankouinfo/pub_kihon_detail.php?sel_id=7244&sel_data_kbn=0
今では珍しいレンガ作りのトンネル、もオススメです。
まとめ
備前焼について知っておきたい基礎知識などをご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
無釉焼き締めによる、わび・さびと限りのない魅力の備前焼と、レトロなレンガ作りの街並み、秋に行われる陶芸市などぜひ見に行ってみてはいかがでしょうか。