【有田焼】知っておきたい基礎知識とその特徴

有田焼とは?

有田焼とは、佐賀県有田町とその周辺地域を産地とする陶器です。約400年前に日本で一番最初に磁器が焼かれたのが佐賀県の西部に位置する有田町で、それ以来、食器・美術工芸品などの物作りが盛んな町です。

有田焼は、基本的に分業によって作られています。成形〜焼成まで、各分野の専門家が伝統的な技法でそれぞれの工程を担当しています。

120万人が来場する有田陶器市

毎年4月29日〜5月5日に開かれる有田陶器市は、有田町内一帯に店舗が立ち並び、全国から約120万人もの人々が訪れます。平成29年現在114回目となる伝統的な陶器市で、種類豊富な磁器製品を安く購入することができます。

 

テーブルコーディネート展やご当地グルメフェアも同時に開催されており、大人から子供まで、家族でも楽しめる有田町のイベントとなっています。

 

国内外の影響を受けた有田焼の歴史

17世紀初期、朝鮮人らが有田の泉山で陶石を発見したことにより、有田で陶器が製造され始めました。当時は素朴な印象のものが主流でしたが、明治時代にはドイツの化学者が有田に招かれ、焼成や染付の方法が工業的に変化していきました。

 

1900年代後半には有田の町並みが国の重要伝統的建造物群保存地区になり、現在のように全国的に有名になりました。

 

有田焼を代表する作家

14代目 酒井田 柿右衛門

佐賀県西松浦群有田町で生まれ、多摩美術大学で日本画を学んだ後、父親の元へ弟子入りしました。1982年に14代目を襲名した翌年、アメリカ合衆国で出品した結果、海外でも高い評価を集めました。

大学での教育やJリーグのデザインアドバイザーになるなど、積極的に後世を育てた後、JR九州のクルーズトレイン内の洗面鉢を遺作とし、2013年に逝去されました。

 

中村清吾

故・中村清六氏の孫で、有田で最も有望な若手の陶芸作家と言われるひとりです。九州大学を卒業した後高麗庵清六釜で修行を始め、平成14年には佐賀美術協会展の美協賞(一席)を受賞しました。現在では毎年のように工芸展で入選し、陶芸界でとても注目されています。

これまでの白磁の概念を覆すような、知的で躍動感が感じられる個性的な器が特徴です。

 

有田焼の特徴

有田焼は、分類上は陶器ではなく「磁器」となります。軽くて薄いのが特徴ですが、実は強度は陶器よりも高く、日常的に使う食器に最適です。

また、長石分などが多い石の粉・陶石と磁土を混ぜて成形するので、きめ細かいなめらかな質感の食器が出来上がります。

 

有田焼の特徴①‐土

磁気である有田焼は、石英・長石を含んだ質の高い天草の土を使用して作られます。それを約1300度の高温で焼成し、鉱物がもとの堅さに戻ろうとする力によって固く焼き上げています。吸水性がほとんどなく、軽く指で叩くと「キン」という金属音がするほどの固さです。

陶器には温かい印象があり、たぬきの置物で有名な信楽焼きなどに使われているのに対し、ガラスのように硬い磁器は、有田焼の他に美濃焼き、青磁・白磁などがあります。

 

有田焼の特徴②‐素地の白色

有田焼は、歴史的な背景から素地の色が白いことも特徴的です。それも白っぽい色ではなく、透き通るような純白です。

この歴史的背景とは、有田焼が海外に輸出され始めた頃に遡ります。オランダ連合の東インド会社と取引していたのですが、彼らの要望のレベルが高く、陶工は開発を何度も重ね、現在の純白の素地が出来上がりました。

 

有田焼の特徴③‐絵付け

素地が白いことから、有田焼には鮮やかな絵付けがよく映えます。現在はとても華やかな絵付けが特徴的ですが、初期の磁器は藍色のみを使った絵柄を描いたものでした。その後、17世紀頃から徐々に鮮やかな色を使ったものが作られ始めました。

まず素焼きした状態の素地に、筆で絵・模様を描きこんでいく「下絵付け」をします。その上に表面を覆う皮膜を作る「釉掛け」をし、高温で再度焼き上げた後に、鮮やかな色を使った「本絵付け」をします。

その後、750〜800度前後でもう一度焼くことにより本絵付けが定着し、ひとつの有田焼が出来上がります。

 

##自然が多く地理的に恵まれた町、有田

有田焼の産地として全国的に有名な有田は、自然が多く、日々を静かに穏やかに過ごすことが出来る町です。人々が時間に追われず、のんびりした気持ちで生活していながらも、佐世保などの都市も近いので、車があれば都心へ出かけられる便利な町です。

このように、ストレスを感じず暮らしやすい有田の町だからこそ、伝統的な製法が守られ、全国から人々が集まる有田焼の名産地であり続けるのでしょう。

 

最後に

約400年も前から磁器が焼かれ、海外との取引を繰り返しながら現在の鮮やかなものが出来上がったという有田焼。自然に囲まれたリラックスできる町の魅力が、現在もなお一層素晴らしい焼き物を生み出しているのかもしれません。

 

今後の有田焼の新たなトレンドに注目すると共に、是非年1回開催される有田陶器市にも足を運んでみて下さい。

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